存在しないプラトニックラブ

雑和失礼(ざわしつれい)といいます

朝、俺が干渉しない予定としてのケーキ

なんとなく目が覚めた。なんとなく右足を左の方に動かすと右足の裏が何かに触れた。

こんな時、俺は「ウンコかな」と思う。目が覚めたらベッドの上にウンコがあるなんてことは通常ありえないのだが、俺は一緒に暮らしている猫が狂っており、ごくたまに俺のベッドの上でウンコをするので、ベッドの上に違和感を感じたらすぐ「ウンコかな」と疑う癖がついていた。

見てみるとウンコだった。それも1個とかではなく5個くらい置いてあった。

ベッドの上にウンコされるのは俺の人生で5回目くらいだが、やはり慣れない。これに慣れてしまったら俺は文化的生命体として終わるという意識があるのかもしれない。

昨日は2週間に1度のゼミ(一回4時間だし、俺は他の学生より勉強が遅れているのでかなり憂鬱)があり、それが終わった解放感と翌日が休日だということもあって午前5時くらいまで起きて酒を飲んでいた。

そして今朝午前9時過ぎに起きてウンコされていることが発覚した。恐らく悪臭で目が覚めたのだろうが、つまり4時間くらいしか寝ていない。処理してから寝直そうにも、ハイターで処理してシャワーに入ってベッドが乾くのを待ってというプロセスには最低でも1時間はかかり、さらに今日は昼過ぎに妹が家に友達を呼んでケーキを作るそうなのでそれまでには起きて家を出なければならず、二度寝は現実的と言えないようだった。

この機会だから、これを読んでいる人にはベッドにウンコされた時の対処法を教えておこうと思う。まず洗面器にハイター(塩素系の漂白剤なら何でもいい)をキャップ一杯入れて水を入れる。そこに雑巾か小さいタオルを浸して絞り、絞ったそのタオルでウンコされた部分を徹底的に叩く。この時、ビニール手袋を着けていないと指に塩素が染み付いて1日取れない。俺は先程も着けるのを忘れたので今日一日は塩素の匂いが取れない。

塩素の匂い。それはプールの匂いであり、ロクに泳げない俺が高校の水泳の検定で最後になってしまい、既に泳ぎ終わったクラスメートの男達から指さされて笑われながら溺れている時の匂いである。また、仕事ができなさすぎて(そして、慣れない仕事に対する根気と適応能力のない俺の甘ったれた性根のせいで)2週間で辞めたドトールのバイトのシフト上がりに店中の雑巾をかき集めて2階のバックヤードでブリーチにかける時の匂いである。

つまり、雨上がりの体育祭に漂う草いきれ、体育の授業後に運動部の男子が使っているあの意味のわからない消臭剤だか制汗剤だかのスプレーの鼻につく匂い、廊下ですれ違った女子の髪の匂い、できない会計の仕事をやらされて全部失敗してめちゃくちゃ怒られた生物部の部室(つまり生物室)に漂う死臭などと同じ、俺の社会不適合を象徴する匂いである。

そういえば高校一年の時に俺が告白したLINEを拡散した女子が男子水泳部のマネージャーだったからイメージ的にはその匂いでもある。

そもそも俺は運動部のマネージャー制度が大嫌いだ。突き詰めたところは別に生活の為でも何でもなく学生の趣味の延長でしかない運動部員が、その無意味な運動に集中するためだけにわざわざ同じ学生の時間を無償で割かせて「世話」をさせるなんてことが許されていいのか。

自分等が使ったユニフォームの洗濯くらい自分でやらせないとロクな人間に育たないのではないか。

何ならマネージャーなんて大した呼び方をするからいけない。マネジメントもやってるんだろうがそれでも仕事の大半は雑用だろう。世話係か無料雑用係とでも呼べばいかに連中が狂ったシステムを当然のように受け入れているのかが分かりやすいだろう。

こんなことを書いていると「運動部員が嫌いで八つ当たりしているだけでは」と言われるかもしれないが、そんなの、そうに決まっている。嫌いなものには噛み付くし嫌いじゃないものには噛みつかないだろうが。当たり前だ。馬鹿が。

世話される側の部員はまあいいだろうがマネージャーは何が楽しくてあれをやっているのか。貴重な学生時代の不可逆な時間を割いてまで男の世話をすることが楽しくてやってるんだとしたら何かの病気である。それでもってただ世話をされてきただけの男達が自分の世話をしてきた女と付き合ったりするのなら、それが肯定されるなら、それが美しいなら、それが正しいなら、それが青春なら、この国に中学高校なんて無くてもいいんじゃないか。死ね。死に腐れ馬鹿共が。

そんなことを言っていても本当に仕方ないし、妹の友達も来たので家を出て駅に行き、二駅先の駅ビルにある眼鏡屋に入った。ネットで目をつけていたサングラスの型番で検索したらこの店が出てきたので試着させてもらうつもりだった。

目当ての型番は無かった。同じ駅ビルの違う眼鏡店も見たがそこにも無かった。

帰り際、手動のドアを開けたタイミングで後ろからババア2人が来たので、ババア達が通れるようにドアを押さえておいてやった。ババア達は当たり前みたいな顔で引き続きくっちゃべっており、ありがとうの一言も会釈の一つもなかったのでババア達の背中に思い切り中指を立ててから俺も駅ビルを出た。

中指を立てた時、ちょうどビルに入ろうとしていた人が信じられないものを見る目で俺を見ていた。

最近運動不足なので二駅分は歩いて家に帰った。

寝不足と運動不足とマスクで息が一気に切れた。