存在しないプラトニックラブ

雑和失礼(ざわしつれい)といいます

ゆるキャン△2

  このまえTwitterを開いていたらゆるキャン△劇場版のテイザー画像が流れてきた。

 よりにもよってパンツスーツを着たしまりんが一人で名古屋の夜景がきれいな夜道を歩いているシーンだった。

 なぜよりにもよってなのか。説明しよう。俺はゆるキャン△の作中で時間経過を感じるのが嫌でゆるキャン△を見るのを辞めたのだ。

 時間の経過があるということは、いつか確実に終わりが来るということだ。だってそうだろう。サザエさんやまるこちゃんみたいな話ではないのだ。クリスマスは年に一回しか来ないし、一回クリスマスを過ごせば次のクリスマスを迎えるころには一年経っているので高校一年生が二年生になっている。それを70回も繰り返せば人は死ぬ。

 しまりんは冬の一人キャンプが好きな子だ。冬というのは年に一度しか来ない。つまりしまりんが冬キャンをワンシーズンに12回(10月から3月までとして、2週間に1回は多いだろうけども黙れ)やるとして、死ぬ直前まで続けるとしても840回キャンプをすればしまりんは死ぬ。

 そう、死ぬのだ。

 しまりんに死んでほしいと思っているゆるキャン△ファンがいるだろうか。いるはずがない。いるはずがないのだ。

 もっと言えば俺はしまりんにおばさんになってほしくもない。永遠に高校生のままでいてほしい。大学生になってほしくない。就職してほしくない。結婚してほしくない。母親になってほしくない。

 でもテイザー画像を見てほしい。地元を離れた名古屋でパンツスーツを着て夜道を歩いている。頭身も高くなっている。

 じゃあもう就職しちゃってるじゃないですか。しかも一人暮らししちゃってるじゃないですか。大学は行ったんですか?彼氏はいるんですか?結婚してるんですか?子供は?

 俺はそういう時の流れを感じるのが嫌でシーズン1の途中から観るのを辞めたのだ。キャラクターに人生感を感じたくない。

 だから正直、ゆるキャン△自体をそんなに見ているわけではない。原作もほとんど読んでいないので何ならファンというレベルでもない。

 しかしこの話の本質はそこではないのだ。俺はシーズン1のクリスマスキャンプの直前で見るのを辞めた。彼女らがクリスマスを迎える様子を見たくなかったからだ。クリスマスというのは年末の行事である。それを迎えてしばらくしたら次の年が来る。そうやって月日は巡り、人は死んでいくのだ。それをゆるキャン△で感じたくない。永遠に高校生のまま無限回のクリスマスを迎え、今年はこうしよう来年はああしようと言いながら皆で楽しく永遠にキャンプを続けてほしい。

 俺はゆるキャン△を可愛い猫の癒し動画と同じモチベーションで観ている。人間のリアリティを求めて観ているわけではないのだ。

 俺はしまりんの祖父に強い憧れを持っている。彼は俺の人生の幻想の終着点と言えるからだ。

 しまりんという孫娘がいるという事実は、彼が結婚して働きながら家族を養い、子供を育て、その子が結婚してしまりんを産んだということを意味する。つまり彼は社会に適応して家族を作り、孫にまで好かれる健常者に違いないのだ。そしてかわいい孫娘が自分に影響を受けて同じ趣味に染まるなど、そうそう手に出来るような幸せではないはずだ。娘(りんちゃんの母親)とたびたび電話でやり取りしているのも家族から愛されている証拠だ。

 俺の親父の血筋は子供に憎まれる血である。父方の祖父はアル中のギャンブル中の多重債務者で家族から縁を切られ、孫である俺との初対面は棺に入ってからだった。その息子も社会性がなく社会からドロップアウトしてアル中になり、妻の貯金を食い潰しながら息子にモラハラを繰り返し例によって浮気にも走ったため探偵をつけられて離婚させられた。どうせ俺もそうなっていくに決まっているのだ。いや俺はこの年にして社交性が終わっているので結婚自体できないに違いない。子供など持ちたくもない。実の父が役に立たないので拒食症の妹の父親代わりをして1年近く、将来自分の子供がこれだったら愛せないだろうなと思うし何よりこんな男の息子か娘として生まれてくる子供が可哀想だ。

 健全で幸せな家庭を持てないことが確定している俺にとってゆるキャン△は現実社会から距離を取るための癒しだった。そこに出てくるしまりんの祖父は、俺が絶対に手にすることが出来ない理想の人生を築き上げた最高の男だ。

 俺はいま21で、院に行きたいので就活を一切していない。いわゆる穀潰しというやつだ。親の脛齧りならぬ母方の祖父の脛齧りである。いい年してバイトもしていない。なぜなら既に社会性が無いからだ。バイトも2つくらいやったがどれも長続きしなかった。親父は自分のことを一匹狼とか言っていたが、この前役所に行って親父の課税証明書を取得して見てみたら一昨年の親父の年収は8万円だった。50代後半になって年収が8万円の自称自営業は一匹狼ではなく社会不適合者である。

 そんな社不適の金玉から産まれた社不適である俺にとって、パンツスーツを着て1人堂々と歩くしまりんの姿はあまりに眩しい。昔のように親の庇護下でブランケットに包まりながら本を読んでいる彼女の姿はもうどこにもないのである。衣食住において人に迷惑をかけない立派な大人になってしまったのだ。

 偉い。

 偉すぎる。

 風が語りかけます。

 美味い。

 美味すぎる。

 埼玉銘菓 十万石饅頭

https://youtu.be/dppGFudPFUs

https://www.jumangoku.co.jp/product/155/

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